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スマホに奪われた「考える力」を取り戻す薬〜 脳を劇的に整え、キャリアを切り拓く『深い読書』の処方箋 〜

Discovery
2026年1月28日

朝、スマートフォンのアラームで目を覚まし、ベッドの中でまず最初にすること。それは、SNSのタイムラインを確認することではありませんか?

通勤電車の揺れに身を任せながら、指先ひとつで次々と流れてくるショート動画をスクロールする。仕事の休憩時間にはニュースアプリで芸能人のゴシップや悲惨な事件の見出しを追い、夜、布団に入ってからも、寝落ちする直前まで光る画面を眺め続ける......

これが、現代を生きる私たちの「当たり前の日常」です。

ある調査によると、私たちは1日に平均して140回以上もスマホのロック画面を解除し、その使用時間は毎日4.5時間にも及ぶといいます。人生の起きている時間の約4分の1以上を、私たちは小さな画面の中で過ごしている計算になります。

「自分はスマホ中毒かもしれない」。そう自認している人は、アンケート回答者の半数以上にものぼるというデータもあります。しかし、ここで立ち止まって考えていただきたいのは、単なる「時間の浪費」という問題だけではありません。

「最近、長い文章が読めなくなった」

「映画を倍速で見ないとイライラする」

「常に何かに追われているような焦燥感がある」

「情報の真偽が分からず、何が正しいのか判断できない」

もし、あなたに少しでも心当たりがあるなら、それはあなたの脳が「終わりのないスクロール」によって、深刻なダメージを受けているサインかもしれません。

現代病ともいえるこの「脳の疲弊」をリセットし、本来の知性と穏やかさを取り戻す鍵。それが、今、世界中の脳科学者や心理学者たちが再注目している「深い読書(ディープ・リーディング)」という習慣です。

今回は、なぜスマホが私たちの脳を疲れさせるのか、その科学的なメカニズムを紐解きながら、明日から実践できる「脳の回復トレーニング」としての読書術を、専門知識がなくても分かるように優しく解説していきます。

スマホに奪われた「考える力」を取り戻す薬 〜 脳を劇的に整え、キャリアを切り拓く『深い読書』の処方箋 〜

「スマホ脳」が抱える静かなる危機

なぜ、一日中ゴロゴロしながらスマホを見ていただけなのに、夕方になるとこんなにも「どっと疲れている」のでしょうか?

肉体的には休んでいるはずなのに、頭の中が重たい。その原因は、脳の「モード」にあります。

脳が「受け身」のまま固定される恐怖

科学的な視点で見ると、スマホを見ている時の脳は「受動的なモード」に固定されています。

テレビをぼんやり眺めている時と同じように、向こうからやってくる情報をただ「処理」するだけの状態です。特に、TikTokやInstagramのリール動画、Xのタイムラインなどは、あなたが「次に何を見たいか」を考える隙を与えません。

アルゴリズムがもたらす「思考の停止」

ここに、テック企業やインフルエンサーたちが設計した高度なアルゴリズムが介入します。彼らの目的は、あなたの「注意力」を1秒でも長く奪い続けることです。

アルゴリズムは、あなたの過去の閲覧履歴、指が止まった時間、クリックした画像を瞬時に分析し、「あなたが心地よいと感じる情報」「つい反応してしまう刺激的な情報」だけを、ベルトコンベアのように次から次へと運びんできます。

「猫の動画を見て癒やされたいな」と思えば猫の動画ばかりが、「最近の政治ニュースに腹が立つ」と思えば怒りを煽る投稿ばかりが、あなたの画面を埋め尽くします。

この状態のとき、脳は自分から情報を探しに行く「探求」をする必要がありません。流れてくるものを口を開けて待っていればいいだけです。この「受け身の思考」が毎日何時間も繰り返されることで、脳の中で本来使われるはずの「深く考え、推論する筋肉」は、使われない筋肉が細くなるように、次第に衰えていってしまうのです。

「何度も見たから正しい」という脳の錯覚

さらに恐ろしいのが、「真実性の錯覚」と呼ばれる脳のバグです。

これは、情報の正誤に関わらず、「何度も繰り返し目に触れた情報を、脳が勝手に『正しい』『真実だ』と判断してしまう」という思い込みのことです。

  • 根拠のない健康法の噂
  • 特定の誰かを攻撃する偏った意見
  • ショッキングな見出しのフェイクニュース

これらがSNSでリツイートされ、あなたのタイムラインに何度も流れてくるとします。最初は「本当かな?」と疑っていたとしても、断片的に繰り返しその情報を浴び続けることで、脳は批判的な検討を放棄し、「これだけみんなが言っているのだから、たぶん本当なのだろう」と信じ込んでしまうのです。

スマホ特有の「流し読み」習慣は、一つひとつの情報の裏取りをさせず、私たちの判断力を麻痺させます。その結果、私たちは誤った情報に対して無防備な状態になり、知らず知らずのうちに誰かの意図に操られてしまうリスクを抱えているのです。

孤独感とストレスの増大(ドゥームスクロール)

「疲れたから気晴らしにスマホを見る」。多くの人がそう言いますが、研究によれば、退屈を紛らわせるためのスマホ利用は、むしろ「退屈感」や「孤独感」を増大させることが分かっています。

特に問題視されているのが「ドゥームスクロール」と呼ばれている心理現象です。

「Doom(破滅)」と「Scrolling(スクロール)」を掛け合わせた造語で、自然災害や事故、悲惨なニュース、他人のネガティブな投稿を、際限なく追い続けてしまう行為を指します。

「世の中はどうなってしまうんだろう」という漠然とした不安を感じながらも、指を止めることができない。これは脳が恐怖や不安に対して「情報を集めて生存確率を上げよう」と過剰反応している状態ですが、結果として脳には大量のストレスホルモンが分泌され続けます。気晴らしのつもりが、自ら脳に毒を流し込み続けているようなものなのです。

スマホに奪われた「考える力」を取り戻す薬 〜 脳を劇的に整え、キャリアを切り拓く『深い読書』の処方箋 〜

なぜ「深い読書」が脳を救うのか

こうした「スマホ脳」の疲弊を立て直し、再び健康的でクリアな状態へと導いてくれる特効薬。それが「読書」です。

ただし、ここで言う読書は、SNSの投稿を読むように文字を目で追うだけの行為ではありません。科学者たちが提唱するのは、「深い読書(ディープ・リーディング)」の実践です。

「深い読書」とは、脳の筋トレである

「深い読書」とは、書かれている文字の表面だけでなく、その情報の意図を汲み取り、背景を推論し、自分の過去の経験と結びつけながら、批判的に吟味して読む行為のことを指します。

これは、情報を右から左へと受け流すスマホの「流し読み」とは真逆の行為です。 読書中、私たちの脳内では、以下のような高度なプロセスが同時進行しています。

  • 推論:「なぜこの登場人物は、ここで嘘をついたのか?」「著者が本当に言いたいことは何だろう?」と、行間(書かれていないこと)を読む作業です。
  • 類推:「この状況、以前自分が失敗したあの時の経験に似ているな」「この理論は、別のニュースで見たあの話とつながるかもしれない」と、既存の知識と新しい情報をリンクさせる作業です。
  • 共感:自分とは全く違う時代、違う性別、違う国に生きる登場人物の感情を、まるで自分のことのように追体験する作業です。

これらの作業は、脳の前頭葉にある「注意力を制御する部分」や「複雑な思考を司る部分」を激しく活動させます。 いわば、読書は脳にとっての「最高の筋トレ」です。スマホによって散漫になった注意力を、意志の力で再び一箇所に集めるトレーニング。これを繰り返すことで、衰えていた「深く考える力」が回復していくのです。

わずか数秒の「休止」が誤情報への盾になる

さらに重要な発見があります。 研究によれば、情報を鵜呑みにせず、意識的に読むスピードを落とし、数秒間だけ立ち止まって内容を吟味するだけで、「真実性の錯覚」の影響を劇的に減らせることが分かっています。

深い読書の習慣を持つ人は、脳内に「情報の検問所」を持っているようなものです。

「ん? ちょっと待てよ」と立ち止まる力。この数秒の「間」こそが、フェイクニュースや扇動的な情報に振り回されない「自分軸」を形成します。読書は、情報過多な現代社会を生き抜くための、最強の防具になり得るのです。

スマホに奪われた「考える力」を取り戻す薬 〜 脳を劇的に整え、キャリアを切り拓く『深い読書』の処方箋 〜

「深い読書」とは具体的にどういう読み方?

「深い読書」といっても、難しく考える必要はありません。哲学書を眉間にシワを寄せて読む必要も、分厚い名作を完読する義務もありません。 大切なのは「何を」読むかよりも、「どう」読むか(情報の受け取り方)を変えてみることです。

誰でも今日から始められる、3つの具体的なステップをご紹介します。

① スピードをコントロールする(能動的な調整)

私たちは毎日、SNSや動画サイトで膨大な情報を流し見しています。次から次へと流れてくるトピックを追いかけるスピード感は刺激的ですが、その分、一つひとつの言葉をじっくり味わう時間は削られがちです。まずは、その「情報の波」から一歩外に出て、自分の心地よいペースを取り戻すことから始めてみましょう。

  • 「立ち止まる」勇気を持つ 本を読んでいて、少し難しい表現や、論理が複雑な箇所に出会ったら、あえて立ち止まってください。一文を二度、三度と読み返しても構いません。スマホでは「分からないものは即スキップ」が基本動作ですが、読書では「分からないこと」こそが、脳を鍛えるチャンスです。
  • 「味わう」時間を作る 「なんだか今の言葉、心に響いたな」とか「今の自分の気分にぴったりだ」と感じる瞬間があったら、ページをめくる手を止めて目を閉じてみてください。その一文が描く情景を、頭の中でショートムービーのように再生してみる。「どうして著者は、あえてこの単語を選んだんだろう?」と想像を巡らせてみる。 情報をただ「採取」するのではなく、テキストと「対話」をする感覚。この静かな対話こそが、深い読書の第一歩になります。
② 注意力を「意図的に」配分する

私たちの注意力には限りがあります。スマホをチェックした後の疲れ切った脳では、深い読書はできません。

読書をしている間だけでも、スマートフォンを物理的に視界から消してみるのも一つのアイデアです。隣の部屋に置くか、カバンの奥深くに仕舞い込む。通知を気にせず、自分の好きな30分間だけを読書に充てると決めるだけで、脳は驚くほどリラックスし、本来の集中力を取り戻します。

③ スモールスタートと「バディ」の活用

最初から分厚い名作に挑む必要はありません。自分が憧れているクリエイターのエッセイや、5分で読み切れるような短いお話から、自分のペースで読み進めてみてください。

  • 短編小説や詩、エッセイから始める。
  • 1日1章だけ、と決めて読む。
  • 「読書仲間(バディ)」を見つけ、読んだ内容について誰かと語り合う。

読んだ後に感じた「エモさ」やちょっとした違和感を、SNSの読書アカウントで発信したり、親しい友人にシェアしたりするのも楽しみ方の一つです。誰かに感想を伝えることを前提にして読むと、脳は自然と内容を深くキャッチしようと働き始めます。自分一人の世界で終わらせず、誰かと共有する楽しみを持つことで、読書はもっと自由でクリエイティブな活動に変わっていくはずです。

スマホに奪われた「考える力」を取り戻す薬 〜 脳を劇的に整え、キャリアを切り拓く『深い読書』の処方箋 〜

「深い読書」は人生をアップデートする

この読み方を習慣にすることは、単なる趣味の時間を超えて、皆さんのこれからのキャリアや人間関係をより豊かにし、自分らしく生きていくための強力な武器になります。

複雑な人間関係を読み解く「共感力」

読書による最大の恩恵の一つは、「共感力」が磨かれることです。 小説などを通じて、自分とは違う価値観を持つ他人の人生を疑似体験することは、他者の視点に立つトレーニングそのものです。

「あの人はなぜあの時、あんなに怒ったのだろう?」

「上司が求めている本当の成果は何だろう?」

現実世界でも、表面的な言葉の裏にある「相手の背景」や「感情」を想像する余裕が生まれます。これは、多様なメンバーと協働するプロジェクトや、パートナーとの深い信頼関係を築く場面において、AIには代替できない、人間ならではの価値の高いスキルとなります。

「精神的回復力」の向上

スマホによる断片的な情報の洪水は、私たちの神経を常に高ぶらせ、疲れさせます。 対して、一冊の本の世界に深く没入することは、マインドフルネス瞑想と同じようなリラックス効果をもたらします。

外の世界の喧騒を遮断し、一つの物語や思考にじっくりと向き合う静寂な時間は、ざわざわしたメンタルを鎮め、ストレスホルモンを減少させます。

また、「深く考える癖」がつくと、ネット上の炎上や、極端な意見、不確かな噂に対しても、「これは本当かな?」「一面的な見方ではないかな?」と冷静に対処できるようになります。

世の中のトレンドや周囲のノイズに流されることなく、自分の中にしっかりとした「判断の基準」を持つこと。 これによって、どんなに変化が激しく、情報の流れが速い時代であっても、折れないしなやかな心で、自分らしく納得感を持って人生を歩んでいけるようになるはずです。

今、この瞬間から「思考の主導権」を取り戻そう

私たちは今、無意識のうちに巨大な情報の波に飲み込まれ、自分の脳を「受動的な消費マシン」にしてしまっています。アルゴリズムに、時間の使い方も、感情の動きさえも委ねてしまっているかもしれません。

しかし、その主導権は、いつでも取り戻すことができます。

「深い読書」とは、情報の海をただ漂流するのをやめ、自分の足で海底深くへと潜っていく冒険です。 そこには、表面的なニュースサイトやSNSのタイムラインには決して流れてこない、あなただけの発見と、魂が震えるような静かな感動が待っています。

キャリアにおいて頭一つ抜け出したい時。

人間関係で疲弊してしまった時。

あるいは、自分が何をしたいのか分からなくなりそうな時。

一度スマホを置いて、カバンの中から一冊の本を取り出してみてください。 「ゆっくり、深く読む」。 たったそれだけの変化が、あなたの脳を健康にし、あなたの人生に、誰も奪うことのできない深い彩りを与えてくれるはずです。

スマホに奪われた「考える力」を取り戻す薬 〜 脳を劇的に整え、キャリアを切り拓く『深い読書』の処方箋 〜

【参考資料】

[1] The Conversation「Deep reading can boost your critical thinking and help you resist misinformation - here’s how to build the skill」
https://theconversation.com/deep-reading-can-boost-your-critical-thinking-and-help-you-resist-misinformation-heres-how-to-build-the-skill-268082

[2] ScienceAlert「One Change to Your Reading Habit Fights Stress And Misinformation」
https://www.sciencealert.com/one-change-to-your-reading-habit-fights-stress-and-misinformation

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